腹黒弁天町
座長のもとに遅れて配達された年賀の挨拶に混じって一通の手紙が届いた
差出人は某県某所に在住の寝たきりのご老人。
若き日の徒然を取材し、芝居にしてほしいというオーダーメイドの芝居依頼だった。
話を聞いたり日記を読んだり歴史を学んだりしてなんとか一編の作品に仕立て上げた。
〜上演は霞がかかったような夜明け前でございました。この障子の向こうにどんな景色が現れますか。人の心は戸板返し、花を返せば鬼が出る。「腹黒弁天町」これより開演でございます。〜
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清濁渦巻く田舎街:弁天町にある中学校に東京育ちの青年二人が就職することとなった。
向かう汽車の中で芸者の小雪とたまたま出会う。
弁天町についた二人は教頭から「清濁併せ呑む」ことの重要さを教えられるが、芸者遊び帰りの校長を目の当たりにし、やはり自分たちの希望と理念を貫こうと二人で決心する。
とくに芸者嫌いを装う財前だが、学生の頃に芸者遊びにて身を持ち崩した過去があり、もう二度と過ちをおかすまいと決心していた。
この街には(というこの世には、だが)学校の運用に必要な生徒つまり金持ちの生徒のテストの得点の水増しや、財政家(大金田)のご機嫌取りが横行している(校長は議員選挙に出馬するために大金田に出資をしてもらっているため)
財前と山岡は信念を貫こうとしていたがそれをよく思わない校長教頭はワナをしかけ、二人はだんだん現実に飲み込まれていく。
ワナ:お座敷を取る(芸者と寝る=この街に染まる)
校長の差金により街一番の芸者である小雪と再開した財前は惹かれ合う。
惹かれ合っているが、芸者の手練手管だと思っている財前・芸者としての仕事をまっとうする(校長や大金田を優先する)小雪・財前が身を持ち崩した過去・校長や大金田からの圧力によってなかなか二人は前に進めないまま
しかし財前は校長教頭になびくことなく信念を貫くスタイルをなかなか曲げない。
一方山岡は、いわゆる「清濁併せ呑」み、校長の議員選挙のため毎晩毎晩お座敷を取り、ご機嫌取りに付き合う。
目の前で物事が動いていくのが面白いとさえ感じるようになっていた。
自分はもう財前のようには生きられないと分かっていながらも財前のことを羨ましく、そして応援している
財前のことをよく思わない校長はヤクザ(鳴海)に財前を懲らしめるよう依頼した。次の日から財前は消えた。
校長といがみ合って学校をやめたのだと思われていたが実際は鳴海によって大怪我をさせられていた。
そして財前は大金田の秘書となって再び皆の前に現れる。
小雪は大金田の贔屓でもあり、財前は大金田に小雪を譲ったという形になっているが実は未練タラタラ。小雪も大金田とは一緒になりたくない。
でもお互いに好きなのに、相手が自分のことを好きなんだという確信が得られないまま時間が過ぎてゆく。(財前は小雪は芸者のしての持ち前の手練手管だと思っているし、小雪も財前にハメられているんじゃないか財前に気持ちを傾けたら大金田に告げ口されて芸者としてはもうやっていけなくなるのではという疑惑が拭えないまま)
そしてある晩。一種の賭けのようだが財前は小雪に金を盗み、駆け落ちしようと提案した。
当日の朝ふたりとも現れ、お互いにホッとしている様子。しかし駅へ向かう途中で教頭に見つかり、鳴海の家に連れて行かれる。
しばらく邸内で逃げるも、もう逃げられないと悟る。
こんな状況でもお互いがお互いを信じきれておらず「君が好きだと信じてほしい。そして好きな気持ちも信じてほしい」「腹ん中かっさばいて見せ合おうじゃないの」と言いながら心中する。
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以降山岡(役)のセリフ:
そしてあなた様のその後でございます。
「行くところまで行く」その言葉通り30代半ばにして教頭の地位に上り詰め鳴海や大金田とのパイプを活かしながら。この弁天町を一大遊郭街へと蘇らせました。
そして旧鳴海邸をお買い上げになり永住の地とされました。そして毎晩奥座敷に二人の幻を見、炎のような青春を胸に刻み込もうとなされたのでしょう。
さて夜も開けてまいりました。これにて腹黒弁天町一巻の終わりとさせて頂きます。
最後にわたくしどもより贈り物でございます。「山岡大介様108歳のお誕生日、おめでとうございます。」
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ひぇ〜〜まさかの劇中劇でしたよ......
しかも芝居をしているのは老人になった山岡に向けて。
結局すべて「山岡が見ていた」世界、「山岡が見ていた」財前、なんだもんなぁ
思い出は美化されるものだけど、実際がどうであれ財前と小雪の心中が美しければ良いのですよ山岡がそう思ってんだろうから。この作品の全ては山岡の世界なんだから。
最後に花束を渡してくれたのが財前(役)と小雪(役)なの願ったり叶ったりだろうな、二人が心中した屋敷買い取って毎晩毎晩そこで寝てんだからさぁ
ずっと二人の幻を見続けた山岡さんどんな気持ちなんだろうね
財前のように自分のやりたいことや生き方を曲げずに貫いているいわゆる世間から頭一個飛び出しているような人にあこがれている人にとったらぶっ刺さり物語なんですわ。
とくにいいなぁと思いながらも自分は世間に身を任せてしまっているような山岡のような人にとってはね。
でも山岡には安心してほしい、山岡も十分突飛だからさぁ。108歳まで長生きし、街を蘇らせ、若き日の徒然を物語に仕立て上げさせたんだからさぁ。それにしても財前に出会えてよかったな、山岡。
奥座敷への襖が開いて、今まさに刺し合うシーンのところの演出が本当に好き。
舞台上にもたくさん人がいるのに、この世には財前と小雪ふたりしかいないみたいな輝きだった。黒の着物に見を包み、包丁を握りしめた二人の手と腰は赤と白の紐で縛られている。
照明、小道具、サウンド、そして二人の表情が相まって「山岡が見たふたりの心中」が描かれていた。すごくすごく美しい空間に思えて仕方なかった。
腹を刺しあった瞬間に桜吹雪が舞って、1年後のシーンに移る。
桜吹雪は残ったままで山岡がふたりを思い出しているシーンに繋がる。こんな綺麗な桜吹雪の回収の仕方があるんだ、、、
ふたりの性格・境遇・過去・時代がすべてうまい具合に重なったからだけどふたりはお互いに「自分が相手のことを好きだという気持ち」を伝えきれず、また、「相手が自分のことを好きだという気持ち」が信じきれず心中だもんなぁちょっと悲しいなあ
大金田の秘書として再び姿を表した財前、すごいよ。街中の芸者を連れ、ハットに和装で登場し歌い踊ってるから本当に怖い性癖すぎて怖いね恐ろしい恐ろしい。(好き)
そのあと財前と山岡は久しぶりにふたらで酒を飲むんだ。昔の話や今の話なんかをしてとっても楽しそう
後ろで芸者が踊っている歌がこれまたいいんだよな
🎶たとえ死んでもその人と飲んで語れば生き返る〜そんな相手がどこかにいるなら人生なんにも怖くない〜🎶
駆け落ちする日の朝、先に着いている小雪を見つけたときの財前の表情、最高なんだよなぁバッキバキに惚れてんじゃん......でも小雪に向かって「ほんとに来るとは思わなかった」とか言っちゃうんだからなぁ
駆け落ちする日、山岡は見送りに来てくれるんだけど、
二人が小雪と始めて出会ったとき汽車の中で手品教えてもらったのにあわせて
財前と小雪見送るときデカデカ帽子の手品始めたとき山岡センスありすぎだよ
と思ったけど彼はそうゆう人だからあの街でやっていけるんだろうなと思った
拗らせまくった男財前を福ちゃんが演じてるのまじで良すぎ。辰巳くんが現実に丸め込まれる山岡なのも。ほんとに解釈の一致なんだけど、入れ替わったらそれはそれで面白そう。みたい。
兎にも角にも、ダブルトラブルを経ての福辰の芝居のテンポの良さやばい。それをベテラン勢がどっしり構えてるのに面白くないはずがないですわ。
車引のゲンさん、お調子者の校長、良いことにも悪いことにも頭がよくキレる教頭、一癖も二癖もある職員たち、華やかな芸者、お花さんにべた惚れの鳴海会長。
舞台のセットや回転、場所や時間の移り変わりも(ほぼ)出演者が自ら自然にこなし、最低限のセットだと思うけれど物足りない感じも不自然な感じもなく、素敵だと思った。松村さんの演出またみたいな
福田さんいつでも演じてる感じしなくて自分に役を取り入れてる感じするけど特に財前ばっちりハマりすぎ
一方辰巳くんは自分とは全く別の人を演じきっている感じなんだよなぁそれも強い
自担が惚れた女と駆け落ち、心中して桜吹雪が舞う、そんな気が狂いそうに素敵な世界見たことあるか?
わたしは見てしまいましたよ